修行

修行をしています。

1日目 GWの終わり

「本日、国王陛下が死去されました。

詳細については現在確認中ですが、何者かによって殺害されたとの情報があり・・・」

画面の中の女性は、驚きと焦りから表情を強張らせながら、淡々とした口調で続きの文章を読み上げる。

 

帝政を敷くこの国において、国王の死は一大事であった。

国王が死ぬことは、そのまま国の方針が次の国王の意向に切り替わることと同義なのだ。

現国王の死去、においてはことさら重要である。

 

現国王は極度の怠け者であった。

彼は、自分が怠けていたいが為、1年365日、

全ての日に祝日を当てがった。

 

彼の施策を、民衆は喜んだ。

明日から、もう働くことはないのだ、と歓喜に震え、毎晩のように宴を催した。

それから、遠くの国へ旅行に行き、未知なる景色や食事を堪能した。

温泉に入り、日々の疲れを癒した。

何も考えず、ボーッと1日を過ごした。

 

そうして、1年、2年と時が過ぎた。

相変わらず好き勝手に遊び呆けていた彼らは、

はじめの頃よりも楽しさを感じないことに気づいた。

 

遠くの国へは行き尽くし、未知なものなど1つもなくなっていた。

温泉に入っても、疲れてもいない体は思ったように癒されない。

何も考えず過ごす時間は、何もすることのない苦痛を感じる時間へと変わっていた。

 

人々の苦しみは頂点に達し、ついに行動へ移す。

あっという間に党を立ち上げ、国王暗殺の算段を立て実行した。

党の後ろ盾を受けて新国王となった王子。

目玉の施策は、「全ての祝日を平日へ。人民に労働の権利を。」

声高らかに宣言し、国中に放映された。

 

再び歓喜の時間が訪れ、人々は労働の嬉しさに酔いしれた。

「明日からは、全身の力を使い切ることのできる生活が始まる。」

「もう、退屈に押しつぶされる日々はおわるのだ。」

涙を流し、抱き合って、労働の喜びを皆で共有した。

 

そして明日から、平日が始まる。